品名:鶯宿梅蒔絵鞍・鐙
寸法:前輪 幅 36cm 高さ28.5cm
後輪 幅 42cm 高さ31cm
居木 幅 13cm 長さ 37cm
破損状況:震災にて被災。全体にほこりが残り汚れている。梨地の錫粉なが錆びて暗色変化し、表面に錆が現れザラザラした表面に変化している。経年の傷みにより全体の塗装幕表面の劣化が進み、艶が失われている。各所に細かい欠け、打ち込み等が多数ある。鐙の蒔絵の一部である、鶯の玉眼(象嵌)が欠損している。
現状:鞍は、木胎に布着せ、漆塗り。表面全体を梨地塗りとする。満開の梅樹と鶯を高蒔絵で表す。鐙は鉄地に漆塗り。鞍同様の蒔絵を施す。鞍の居木の裏に「永正六年(室町時代1509年)の刻銘があるが表面の蒔絵様式と一致しない可能性がある。蒔絵の様式は、梨地に錫粉が用いられている、蒔絵の肉取りの具合、鶯の眼に貝が嵌められていること、鶯の頭部・腹に朱漆の暈しがあることなどにより、江戸時代以降の特徴を示している。何れにしても200年以上前に伊達家家臣が使用した貴重な逸品である。
修理方針:作品の古美術的な風格、美しさを保ち、これ以上破損が進まないように補強する。保存修理。
修理方法:
1。全体の汚れを、古色を失わないように注意深く洗浄する。
2。ひび割れや欠け、浮き上がりに漆を染み込ませて、亀裂の広がらないように固定する。
3。大小の欠損部にこくそ漆や下地漆を充填して整形し、調色した漆を塗り込み傷を目立たないように復元する。
4。右鐙正面に位置する鶯の眼の欠損した部分に貝を用いて復元する。
5。全体に漆を染み込ませて、漆塗膜の強化を行う。
6。梨地の錆による黒化は、梨地塗りに用いた梨地粉の素材が錫粉を用いているためである。経年の変化で錫粉が錆化して、黒変と表面の細かな凹凸を生じている。
これを製作時の状態に復元するのは不可能であるが、塗膜の強化を図ることで錆の進行をできるだけ遅らすように処置する。写真:修繕後。後日、鞍も紹介予定。